フィリピン意匠の出願手続・登録要件・審査の流れ

フィリピン意匠の出願手続・登録要件・審査の流れ

フィリピンで製品のデザインを保護するためには、IPOPHL(フィリピン知的財産庁)に意匠登録出願を行います。

フィリピンの意匠制度は、製品の技術的機能ではなく、製品の形状、模様、線、色彩その他の視覚的・装飾的な外観を保護する制度です。

一般的な工業製品のほか、包装容器、家具、家電製品、車両、ファッション用品、画面デザイン及び建築物など、幅広いデザインについて意匠登録を検討できます。

1.保護対象となる意匠

フィリピンでは、製品又は物品に表された装飾的又は美的な外観が意匠登録の対象となります。

意匠の構成要素:

  • 製品の形状
  • 模様、線又は色彩
  • 形状、模様及び色彩の組合せ
  • 製品全体としての外観

保護対象となり得る代表例:

  • 家電製品、電子機器及び機械
  • 自動車及びその部品
  • 家具、日用品及び包装容器
  • 衣類、バッグ、アクセサリー及び宝飾品
  • 画面デザイン、GUI、UI及びアイコン
  • 建築物その他の構造物

※具体的な登録可能性は、意匠が適用される物品、図面又は画像による表現及び外観上の特徴が明確に特定されているかなどを踏まえて判断されます。

2.画面デザイン、GUI、UI及びアイコン

スマートフォン、タブレット、コンピューター、車載ディスプレイ、家電製品等に表示される画面デザイン、GUI、UI及びアイコンについても、視覚的なデザインとして意匠登録を検討できます。

想定されるデザイン例:

  • アプリケーションの操作画面
  • ウェブサービスの画面
  • 車載ディスプレイの表示
  • アイコン

出願に際しては、画面デザインが使用される製品又は表示装置との関係を明確にし、保護を求める画面の内容を図面又は画像によって特定することが重要です。

注意点:

単なるソフトウェアの機能、操作方法、プログラム、アルゴリズム又は抽象的な情報そのものは、意匠制度による保護の対象とはなりません。

3.建築物及び内外装デザイン

建築物、店舗、ホテル、レストラン、展示施設等のデザインについても、一定の場合には意匠登録を検討できます。

出願に際しては、単なる抽象的な空間コンセプトではなく、保護対象となる具体的な構造物又は物品、外観上の特徴及び図面に表された範囲を明確にする必要があります。

推奨事項:

建築物の設計図や芸術的表現については、意匠権だけでなく、著作権による保護についても併せて検討することが望まれます。

4.複数のデザイン及びバリエーション

フィリピンには、日本のような独立した関連意匠制度はありません。そのため、類似する複数のデザインを保護したい場合には、各デザインを個別に出願することを基本とします。

もっとも、複数のデザインが同一のデザインコンセプトに基づき、支配的な特徴が共通し、同一のロカルノ分類に属するなど一定の条件を満たす場合には、1件の出願に含めることが認められる場合があります。

※独立した複数のデザインが含まれる場合には、IPOPHLから分割出願を求められることがあります。

5.公開延期制度

フィリピンには、日本の秘密意匠制度と同一の制度はありません。一方、出願人は、意匠出願の公開延期を請求することができます。

  • 公開延期期間: 出願日又は優先日から最長30か月
  • 請求タイミング: 出願時に行うことができるほか、出願後であっても意匠出願が公開される前であれば請求可能

公開延期制度が有用なケース

  • 新製品の発売前までデザインを公開したくない場合
  • 製品発表、展示会又は販売開始の時期と公開時期を調整したい場合
  • 複数国への出願スケジュールと公開時期を調整したい場合
  • 競合他社に新製品のデザインを早期に知られたくない場合

※公開延期を請求しない場合には、意匠出願は原則として登録前にIPOPHLの電子公報に公開されます。新製品のデザインを発売前まで秘密にしておく必要がある場合には、公開延期制度の利用を検討するとともに、製品発表、広告及び販売開始の時期を考慮して出願スケジュールを立てることが重要です。

6.登録を受けるための主な要件

  • 新規性又は独創性:登録を受ける意匠は、新規又は独創的でなければなりません。出願前に販売、展示、広告又はインターネット等で公開されたデザインは、新規性に影響する場合があります。
  • 視覚的な外観であること:意匠制度は、目で見て認識できる製品の外観を保護します。製品の内部構造、製造方法、操作方法又は技術的原理そのものは保護対象となりません。
  • 技術的機能のみによる形状でないこと:技術的機能のみから決定される形状は、意匠登録の対象とならない場合があります。技術的特徴については、特許又は実用新案による保護を検討します。
  • 物品との関係が明確であること:模様、画像又は装飾を出願する場合には、それが適用される製品又は表示画面との関係を明確にする必要があります。
  • 公序良俗等に反しないこと:公の秩序、健康又は道徳に反する意匠は、登録を受けることができません。

7.出願に必要な情報及び書類

フィリピン意匠登録出願には、通常、次の情報及び書類が必要です。

  • 出願人の氏名又は名称及び住所
  • 創作者の氏名及び住所
  • 権利取得の根拠(必要な場合)
  • 意匠に係る物品の名称
  • 意匠の説明及びクレーム
  • 図面、写真又は画像
  • 優先権情報及び証明書類(必要な場合)
  • 委任状その他代理権を証明する書類(必要な場合)
  • 所定の手数料

※外国の出願人は、通常、フィリピンの現地代理人を通じて手続を行います。

8.図面及び写真

意匠権の保護範囲を決定する上で、図面又は写真は極めて重要です。原則として、意匠の外観を十分に開示できる図面又は写真を提出します。

一般的には、斜視図、正面図、背面図、平面図、底面図及び左右側面図を提出します。

  • 図面間の整合性: すべての図面は、同一の意匠を一貫して表していなければなりません。図面間で形状、模様又は部品の位置が異なる場合には、補正を求められることがあります。
  • 色彩の保護: 色彩を保護の対象とする場合には、カラー図面又はカラー写真を使用することができます。

9.優先権主張

日本その他のパリ条約加盟国で先に意匠出願を行った場合には、最初の出願日から6か月以内にフィリピンへ出願することにより、優先権を主張できる場合があります。

優先権を主張する場合には、出願番号、出願日及び出願国等を記載し、所定の期限内に優先権証明書類を提出します。

10.方式審査

出願後、IPOPHLは主として方式要件について審査を行います。

主な確認事項:

  • 出願人及び創作者の情報
  • 権利取得の根拠
  • 意匠に係る物品の名称
  • 意匠の説明及びクレーム
  • 図面又は写真の形式及び整合性
  • 優先権に関する情報及び書類
  • 代理権及び手数料
  • 明らかに登録対象外の意匠に該当しないか

不備がある場合には、IPOPHLから補正通知が発行され、所定の期間内に補正又は応答を行う必要があります。

11.実体審査を原則としない登録制度

フィリピンの意匠制度では、日本のような通常の実体審査は原則として行われません。方式要件を満たした出願は、IPOPHLが職権で登録可能性報告を発行する場合等を除き、原則として通常の実体審査を経ずに登録されます

実務上の重要ポイント

登録された意匠であっても、新規性又は独創性が最終的に保証されたことを意味するものではありません。権利行使やライセンスを予定している場合には、事前に先行意匠調査を行うことが重要です。

12.登録可能性報告

出願人又は権利者は、IPOPHLに登録可能性報告(Registrability Report)を請求できる場合があります。

登録可能性報告では、関連する先行意匠が調査され、登録要件に関する参考資料が提供されます。

特に有用なケース:

  • 権利行使を予定している場合
  • ライセンス契約を締結する場合
  • 投資又は事業譲渡の対象となる場合
  • 意匠権の有効性を確認したい場合

13.登録及び登録後の取消し

方式要件を満たした出願は登録され、登録証が発行されます。

もっとも、登録後であっても、登録要件を満たしていない場合には、第三者から取消しを請求されることがあります

そのため、実体審査を経ずに登録される制度であっても、出願前の先行意匠調査及び適切な図面作成が重要です。

14.出願から登録までの基本的な流れ

フィリピンでは、原則として通常の実体審査を行わないため、比較的手続きがスムーズで迅速な権利取得が期待できます。

  1. 出願前調査・出願方針の検討
  2. 図面及び出願書類の作成
  3. IPOPHLへの意匠登録出願
  4. 方式審査
  5. 補正通知への対応(必要な場合)
  6. IPOPHL電子公報への公開
  7. 登録
  8. 登録証の発行

15.出願時の主な注意点

フィリピンで有効な意匠権を取得するためには、特に次の点が重要です。

  • 製品を公開又は販売する前に出願する
  • 保護対象となる物品を明確にする
  • 保護したい特徴を図面で明確に表す
  • 各図面の内容を一致させる
  • 不要な背景、文字及び寸法線等を記載しない
  • GUIは表示画面及び製品との関係を明確にする
  • 複数のバリエーションは適切な出願方法を検討する
  • 権利行使を予定する場合には先行意匠調査又は登録可能性報告を活用する
  • 優先権主張の期限を管理する

TSUBAME IP Philippinesのサービス

TSUBAME IP Philippinesでは、フィリピンにおける意匠権の取得から登録後の権利管理まで、ワンストップでサポートしています。

  • 出願前調査及び登録可能性の検討
  • 出願戦略の立案
  • GUI、UI、アイコン及び建築物デザインの検討
  • 図面、写真及び画像のレビュー
  • 出願書類の作成
  • パリ条約優先権を利用したフィリピン出願
  • IPOPHLへの出願及び方式審査対応
  • 登録、更新及び意匠ポートフォリオ管理

当事務所では、日本企業及び海外企業によるフィリピンでのデザイン保護を、現地実務と国際的な知的財産戦略の両面からサポートします。