存続期間・権利行使上の留意点
フィリピンにおける実用新案権(Utility Model)の存続期間は、出願日から7年間です。
特許権の存続期間(出願日から20年間)と比較すると短期間ですが、実用新案制度は迅速な権利取得を目的とした制度であるため、製品ライフサイクルの短い技術や改良技術の保護に適しています。
一方で、実体審査を経ずに登録される制度であることから、権利行使に当たっては特許とは異なる注意点があります。
存続期間
フィリピンの実用新案権の存続期間は、出願日から7年間です。
特許制度とは異なり、以下の制度は設けられていません。
- 年金(Annuity)の納付制度
- 更新制度(Renewal)
- 存続期間の延長制度
したがって、登録後は7年間のみ権利が存続し、その後は自動的に消滅します。
実務上のポイント:
事業計画を立てる際には、製品の販売期間や市場投入時期を考慮した上で、実用新案制度と特許制度のどちらが適しているかを検討することが重要です。
実用新案権者が有する権利
登録された実用新案権者は、登録された技術について独占的な権利を有します。
第三者は、権利者の許諾なく、原則として次のような行為を行うことはできません。
- 製造
- 使用
- 販売
- 販売の申出
- 輸入
- 営業目的での保管
※これらの行為が行われた場合には、侵害行為となる可能性があります。
また、実用新案権は財産権であり、ライセンス(実施許諾)、権利譲渡、相続、担保設定などの対象とすることも可能です。
権利行使の際の注意点
フィリピンの実用新案制度では、特許制度のような本格的な実体審査を経ることなく登録されます。そのため、「登録されていること」と「権利が常に有効であること」は必ずしも同じではありません。
有効性が争われる可能性があるケース:
- 新規性がない
- 法律上の登録要件を満たしていない
- 先行技術と実質的に同一である
重要:
上記のような事情がある場合には、登録後であっても権利の有効性が争われる可能性があります。そのため、侵害警告書の送付や訴訟提起を行う前には、登録実用新案の有効性について十分な検討を行うことが重要です。
権利侵害への対応
第三者による無断使用を発見した場合には、状況に応じて次のような対応を検討します。
- 技術内容及び侵害製品の調査
- 権利範囲の確認
- 先行技術の再調査
- 侵害証拠の収集
- 警告書(Cease and Desist Letter)の送付
- ライセンス交渉
- 和解交渉
- 行政上又は司法上の手続の検討
※侵害の有無は請求項(Claims)の記載内容を基準として判断されるため、出願時の請求項の作成は極めて重要です。
ライセンス及び権利譲渡
実用新案権は、事業戦略に応じて第三者へライセンスを許諾したり、権利を譲渡したりすることができます。
活用例:
- フィリピン企業への製造ライセンス
- ASEAN地域での販売ライセンス
- 共同開発契約に伴うライセンス
- 技術移転契約
- M&Aに伴う権利譲渡
※契約内容によっては、IPOPHLへの登録手続が必要となる場合もあるため、契約締結時には専門家への相談をお勧めします。
特許制度との使い分け
実用新案制度は、すべての技術に適しているわけではありません。
| 制度 | 適しているケース |
| 実用新案が適しているケース | ・製品改良 ・構造変更 ・部品配置の工夫 ・短期間で市場投入する製品 ・中小企業・スタートアップの技術 |
| 特許が適しているケース | ・基本技術 ・長期間保護したい発明 ・国際ライセンスを予定している技術 ・高い競争優位性を有する技術 |
※技術内容によっては、特許制度を選択した方が事業上大きなメリットを得られる場合もあります。
当事務所のサポート
当事務所では、フィリピン実用新案に関する以下のサービスを提供しています。
- 出願前の技術内容の検討
- 特許制度との比較・選択に関するアドバイス
- 先行技術調査
- 明細書・請求項・図面の作成
- フィリピン実用新案出願
- 優先権主張を伴う外国出願
- 権利譲渡・ライセンス契約に関するサポート
- 権利侵害に関する初期対応及び現地専門家との連携
実用新案制度は、迅速かつ比較的低コストで技術を保護できる有効な制度です。一方で、制度の特徴を十分に理解し、特許制度との違いを踏まえて活用することが重要です。
当事務所では、お客様の技術内容、事業計画及び海外展開戦略に応じて、最適な知的財産保護の方法をご提案いたします。
